たのしくあるために選んだ生活スタイル*前編*ウィヴァネストペンギン@京島

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洋服が破けたらどうしますか?

きっと「買い換え」を考える人がほとんどじゃないでしょうか。わたしもそのひとりです。むしろ「お直し」は頭に浮かぶことさえありませんでした。少なくとも今まで「お直し」に接したことがあるのは、新しいズボンを買ったときに裾を直してもらったときくらい。そんな人が多い気がします。でも今回お話を聞いたウィヴァネストペンギンには、連日お客さんが足を運びます。

ウィヴァネストペンギンは、墨田区京島にあります。以前インタビューした小畑さんが営む、サテライトキッチンと長屋をともにするーー小畑さんと同じグーミのバンドメンバーでもあるーーお店です。そんなウィヴァネストペンギンの店主、飛田さんにお話を聞きました。

「お直しはゼロか100かみたいな。出す人と出さない人がすごいはっきりしてるかも。今まで使ったことないっていう人は、直すっていう概念がないんじゃないかな」

やる人は、たとえそれが1センチの丈詰めーー服の長さを短くするーーでも持ってくるのだとか。それもともすれば購入した金額と同じくらいの額を出してお直しすることも。

「直してる人は、こだわりがあって、自分にあったサイズを着たいとか。自分に合ったものを知ってる人なのかも。ちょっとの丈でも、全然シルエットが変わるんで」

それはつまり気に入っている服があるから、直すという発想があるのだろうけれど、そう言われるとわたしは特にお気に入りの服もないから、結局、新しく買うを選んでしまっているけれど、思えばそれは大量生産・大量消費の流れに流されているだけと言えるのかもしれない。

「そう思うとここの場所も自分たちで改装して直したっていうのも、たしかに(洋服を直すのに)近いかも。だからこのまちの古いものを大事にする感じとかにも馴染んでる理由になるのかなって」

そんなウィヴァネストペンギンは、Tシャツのリメイクから始まりました。

「最初は全然、販売目的ではなかったけど、自分がバンドTシャツを持ちすぎていて、これかわいいんだけど、よれよれだなとか。それでちょっとバッグにしてみようかなと思って、バッグにしたのがきっかけです」

音楽好き、もといバンド好きはおもわずウンウンと頷いてしまうお話かもしれません。かくいうわたしも大のバンド好き。バンドTシャツは捨てるに捨てられないアイテム。ライブに行った記念に買ったりしていたら尚更。それはただのTシャツではなく、思い出という宝物と言ってもいいのだから。だからこれを始めたと聞いたときはすごくウンウンと頷いてしまいましたーー当時からバンドのライブ撮影もしていたこともあり飛田さんのことも知っていましたーーそれはわたしだけではなく、小畑さんをはじめとしたバンド仲間も同じだったようです。

「小畑くんとかに見せたら、めっちゃいいじゃんって言って。最初は友人からですかね。やってやってみたいな感じで。それいいよみたいな感じで。どんだけ反響出るかわからないけど、なんかやってみるかと思って、ネットとかでも受注で作りますみたいなのをやったら、ほんと数件ですけど、全然知らない人とかがお願いしますみたいなのが来てたりしたのが最初ですかね」

このネット販売をきっかけにウィヴァネストペンギンという名前をつけました。

「ウィヴァネストは造語で「weaver」と「nest」を足しちゃったんですよ。「weaver」は編む人で、「nest」は鳥の巣で、ペンギンは好きだったから」

もともとは趣味で小物の編み物を作ったりしていたこともあって、毛玉を連想させる鳥の巣。そしてペンギンは、漢字は「人鳥」と書くし、つがいで子育てをしたり、二足歩行だったり、人間らしい暖かさを感じて好きだったのだとか。そんな暖かい好きなものを集めてつけた屋号です。

「ちょっと欲張りすぎる名前になっちゃったんですけど。でも先入観のない子どもたちは、そういうペンギンがいるのって言いますね」

たしかに図鑑を開けば数多のペンギンの種類がいることを考えると、いてもおかしくない名前かもしれません。そんな先入観のない子どもたちも足を運ぶのが、このウィヴァネストペンギンのおもしろいところ。いや、それはこの道幅4mほどしかなさそうな店先の通りが象徴するように、下町感あふれるこのまちならではの魅力なのかもしれません。その魅力については、後編で書くとして。そうやって始めたウィヴァネストペンギンは、次第に飛田さんのライフワークから仕事へと変わっていきます。

「バンドやってた10年とかはずっと楽器屋に勤めててんだけど、バンドと一緒に楽器屋もやめたんですよね」

それからはもともと趣味でやっていた編み物から手芸屋さん、クラフトビール屋さん、そしてお直し屋さんと、その時々の想いと、つながりで転々としていました。でもお直し屋さんで働いている最中に、どこかで思っていたお店を開くことを意識し始めて物件を探していた頃に、ちょうど小畑さんから隣が空くことを聞きました。

「もともと住んでたおばあちゃんから使ってくれる人、誰かいないかなっていうの を小畑くんが相談されていて、普通の不動産が改修してただの住居にしてしまうのはつまらないから、どうせやるならリノベーションしてお店として、できれば誰かとシェアして使いたいと思ってたところに わたしを思い出してくれて」

そうして2021年4月にウィヴァネストペンギンは、サテライトキッチンと長屋をともにするかたちでオープンしました。それも長屋らしく、外に出ることなくつながるかたちで。

(つづきます)

ウィヴァネストペンギン〜京島•曳舟•押上 洋服のお直しカフェ〜

場所:東京都墨田区京島3丁目48−3

営業時間:12:00~18:00

定休日:火水

Instagram:@w.n.penguin

*営業日、営業時間については、SNSなどでご確認ください。

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