
「あそぶこと」
はたらくことについて聞くとそんなことばが返ってきました。そう言えば、北本市観光協会の岡野さんに話を聞いた際も似たような答えが返ってきたことを思い出しました。それはまちについてでしたが、どうやら北本はそんなことばがよく似合う場所なのかもしれません。今回お話を聞いたのは、そんな岡野さんをはじめとした暮らしの編集室が運営するレンタルシェアスペース「ケルン」で、2021年夏より「喫茶ケル
ン」を担当しているヤスノサトミさんです。今回はそんな彼女の「喫茶ケルン」には収まらない、あそぶことを伺いました。
text & edit by Esaki Nariya
「それでいいんだっていうことに気づいた。好きなことでいいんだって」
「保育士になる前も、デザイン系の学校にいくか、保育にいくか迷ってて。で、生きていくために保育を選 んだんですよ。安定を選んだ。けど、これやりたかったんだなって。ぐるっと回って気づいた」
それを気づかせてくれたのは、実は北本市観光協会の岡野さんと会話をしているときでした。ひょんな ことから「これだったら一生やってけるって仕事は?」と聞かれて出てきたのがデザインでした。「喫茶ケ ルン」を週に3日営みながら、北本の自然を伝えるべく「森林セラピーガイド」としてもはたらいてる、そん な彼女のもうひとつの顔はデザインをつくる人です。
「きっかけは、こういう(デザインの)仕事もしたいなって、江澤さんに言って」
江澤さんは、レンタルシェアスペース「ケルン」を運営する暮らしの編集室のひとりです。喫茶ケルンを 開くきっかけをつくってくれたのも江澤さんでした。
「デザインの仕事をしたいと話したときに、でもケルン(レンタルシェアスペース)のカレンダーとか喫茶ケ ルンのメニューとか、それくらいしか見たことないから、どういう作品つくるの?って聞かれました。だから 過去の作品を探して、こういうのとか、こういうのとかーー保育の学校のときに縫ってつくった布絵本の 写真とかーーあるものをとりあえず見せて。じゃあやってみるってことになりました」
前編の冒頭のやりとりを思い出します。もちろん「喫茶ケルン」にいたるまでの背景には、彼女が森林 セラピーガイドをやっていたり、ナチュラルフードコーディネーターの資格を持っていたり、しっかりとした 土台があったからこそ。でも今回は土台があったわけではありませんでした。ただただ、むかしから友達 のメッセージカード製作にのめり込んでしまうと、気づけば朝を迎えていることもあったくらい好きなだけ で、特に実績らしい実績はありませんでした。でも一歩踏み出したことで人生がまた大きく動きます。
実際、彼女が手がけたのは、江澤さんが企画・運営する浦和パルコで開催されたマーケット「今日から の暮らし」のデザイン。浦和パルコで開催されたことを考えると、デザイン事務所で言えば決して小さくな い案件と言ってもいいかもしれません。でもそれは実際使用されたデザインをみると納得してしまいま す。

「これも本物の葉っぱを切って、これ葉っぱなんですよ。ユーカリの葉っぱを切って貼ってて。これとかも 雑誌の岩山の写真を切り抜いて、くしゃくしゃにして貼ってたりするんです。これはふるさと納税で届いた 北海道の鮭が包まれてた紙。でもそういうところにいい素材が転がってて。とっとくんですよ。これいい なって思ったら。それで本当にあるもので作る。全部そう」
ここにも彼女のあるものを生かす感性が存分に発揮されています。でも彼女の話を聞いていると、ある ものを生かすだけでなく、あるものへの感謝を感じます。それは自然や食に対する感謝だけではなく、周 りの人への感謝も感じさせてくれます。それも先に出てきたおじいちゃんやご両親だけではありません。
「小学校の担任の先生とかかな。すごく生徒の気持ちに寄り添ってくれるいい先生でした。なんだろう、 小学生は勉強はもちろんしなきゃだけど。遊びの時間というか、子どもたちがやりたいと思うことを、自分 たちで実現するための手助けをしてくれる先生でしたね」
生徒が巨大ドミノをやりたいと言うと、体育館を貸し切ってくれたり、巨大シャボン玉をやりたいと言う と、どうやったらできるかを助言してくれたり。あくまで主体は生徒たちで、先生は助け舟を出すのみ。そ れは学校の先生だけじゃなく、塾や学童保育の先生もそうだったのだとか。でも塾に行けば、勉強をしな きゃと思ってしまう、あるいは思わされている子どもも少なくないことを考えると、彼女にはあるものに感 謝する気持ちがあるからこそ、あるものを生かすことができるのかもしれません。そしてそんな子どもの 頃の記憶が色濃くあるからこそ、はたらくことについて訊くと、冒頭のような答えが出てきたのだと思いま す。
「あそぶこと。好きなことをすること。自由でいられることかな。好きなことしかやってないですからね。そ したら好きなことを働くこととしてやってる人が、周りに溢れていくし。そういう人とつながるのが楽しいし、 最高なんですよ。それでいいんだっていうことに気づいた。好きなことでいいんだって」

それは人に合わせたり、周りの目を気にし過ぎたり、いろいろなことが重なって、体の不調を経験した からこそ、たどり着いた答えなのかもしれません。
「保育園のころ。純度100パーセントだったんですよ。北本の自然の中でたくさん遊んでいて、その頃が 一番自分らしく生きていたと思います。そして今、また北本で全力で遊んでますからね。だから今、自分 の純度がどんどん上がってますね(笑)」
まちについて聞くとそんな答えがかえってきました。今まで一番楽しかったのは長いこと保育園の頃 だったけれど、今、ようやく今が一番たのしいと言えるようになったのだとか。そんな彼女の話を聞いて いると、本当に北本が好きで、今がたのしくて仕方ないんだろうなと思います。そのたのしさは、ファンで しかなかったミュージシャンのライブを企画してしまうほど。
「もっともっと自分の純度を上げていきたいです」
自分の純度を高めてみたいと思ったら、まずは「喫茶ケルン」に足を踏み入れて、おはぎやスコーンを 口にしながら、あるいは、北本の自然に触れながらゆっくり過ごすことから始めてみてもみてもいいかもしれません。
(おわり)

喫茶ケルン
住所:埼玉県北本市中央1丁目109-105
営業時間:10:00~17:00
営業日:金曜日〜日曜日
Instagram:@_tsumiishi_
*シェアキッチンスペース「ケルン」のSNSです。
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