特集:21世紀の百姓解剖論「ヤスノサトミ」純度100パーセントでいられる場所*中編*

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「あそぶこと」

 はたらくことについて聞くとそんなことばが返ってきました。そう言えば、北本市観光協会の岡野さんに話を聞いた際も似たような答えが返ってきたことを思い出しました。それはまちについてでしたが、どうやら北本はそんなことばがよく似合う場所なのかもしれません。今回お話を聞いたのは、そんな岡野さんをはじめとした暮らしの編集室が運営するレンタルシェアスペース「ケルン」で、2021年夏より「喫茶ケルン」を担当しているヤスノサトミさんです。今回はそんな彼女の「喫茶ケルン」には収まらない、あそぶことを伺いました。

text & edit by Esaki Nariya

「1回小麦抜きの生活をしたんですよ。そしたら、不調が一気になくなったんです」

「募集の文言に、北本が好きな人、北本の自然が好きな人、待ってますみたいに書いてあったんですよ。わたしじゃんみたいになって。母もそれ見て、これなんじゃないみたいに言ってくれて。ああ、やりたいって思って。募集申し込みの日の朝一番に電話しました」

 ヤスノサトミさんのもうひとつの顔は森林セラピーガイドです。北本市は森林(里山・雑木林)が持つ癒し効果が科学的に認められ、2019年に「森林セラピー基地」として認定されました。そのセラピーガイド募集の第1期生のなかでも一番乗りで電話しました。一番乗りで電話したのには、わけがありました。それはグルテンフリーをはじめた理由とも重なります。

「もともと親がけっこう、添加物とか気にする親で。ちっちゃい頃から、お弁当の中に冷凍食品とか入ってたことがなかったんですよ。だから友だちのお弁当に入っていたカップの底に占いが書いてあるグラタンとかが、羨ましくてしょうがなかったんです。でも中高生くらいになると自由が広がるじゃないですか。友だちと一緒にコンビニでお菓子買って食べたりとか、そういうことが増えて、ジャンクフードにまみれいって。あとで振り返ってわかったんですけど、その頃から、慢性的に体調がよくはなくて。すっきりしてる日がないっていうか、偏頭痛がひどくなったり、倦怠感があったりしました。保育士していたときも頭痛薬飲みながら仕事してっていうことが多くて。でも薬を飲むと副作用で眠くなってしまうし、悪循環になっちゃって」

 ヤスノさんは、もともとは保育士をしていました。しかし、体の不調が続き、1年半ぐらい病院と家の行き来だけの生活が続きました。でもそこでいろいろと調べていくなかで、出会ったのがグルテンフリーでした。

「テニスのジョコビッチ選手が、小麦を抜いて、グルテンを摂らないようにしたら、身体の不調が改善されて、テニスの成績とかパフォーマンスが上がったっていう話があって。それでけっこう知らずにグルテンが原因で不調になってる人がいるみたいなことを知って。わたしもやってみようと思って、1度、小麦を摂らない生活をしてみたんですよ。そしたら、それまでの不調が一気になくなって、これだったのか!と同時に、え、生きるのってこんなに楽だったの?と思いました」

 そうして食の大切さに目覚めました。目覚めると、1年半の療養中に通信講座でナチュラルフードコーディネーター(自然食や農薬を使わないで育てたものをどうやって調理して、体に入れるか。また、化学調味料を使ってない自然な形でできた調味料の選び方などを専門とする)の資格も取得。そして冒頭の森林セラピーガイドの資格も取得しました。

写真:江澤勇介

「自然が大好きなんです。自然の中で育って来たからか、疲れると自然の中に身を置きたくなるっていうのがあって。療養中も、保育士の同期に連れ出してもらって、山奥で1日1組しか泊まれない山小屋に行ったり、ほとんど人に会わないような島に行ったりしてました。わたし自身、食事の改善と同時に、自然の力もたくさんかりて元気になっていったから、自然が持っている癒し効果を伝えられるガイドの仕事って、めちゃくちゃいいなと思ったんです」

 だからまるでライブのチケットを取るように、電話の前で待って、時間ぴったりに電話をしてしまう。そうしなければならないほど、森林セラピーガイドになることは、彼女にとっては重要なことだったのだと思う。そしてそのふたつーーナチュラルフードコーディネーターと森林セラピーガイドの資格ーーを手にすることで彼女は外に踏み出すことができました。それもまるでその1年半の時間を埋めるように、いや、むしろその1年半があったことを証明するように、喫茶ケルンでは、食の大切さを伝えーーそれも北本産の野菜も交えてーー森林セラピーガイドとしては、大好きな北本の自然を伝える。食と自然という、身近で大事なことのはずなのに、どこか日々の忙しさにかまけて、おろそかにしてしまっているわたしたちに、それを気づかせてくれる場があることは、これ以上にない贅沢かもしれません。

 でも実は彼女の仕事はこれだけではありません。将来の夢には、堅実な保育士の道とは別にもうひとつ夢がありました。

「保育士になる前も、デザイン系の学校にいくか、保育にいくか迷ってて、で、生きていくために保育を選んだんですよ。安定を選んだ。だけど、やっぱりこれをやりたかったんだなって。ぐるっと回って気づいたんです」

(つづきます)

写真:江澤勇介

きたもと森林セラピー

ホームページ:http://kitamoto-forest-therapy.com/

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