
「どっちかなって判断するときは、その子が喜んでくれると思うほうを選ぶので、だからたぶん、心から自分が笑っていられる方に常に進んで行けるんだと思います」
一番最初の子は確かに大きく人生を変える出来事だったけれど、でももちろん、その当時は決して楽しい時間じゃなかったのもまた確かだ。
「子育てを共有するママ友をつくる時間もなければ、誰かに相談することも、相談する友達もいなかった」
だからこそ、そんなつらい思いを他の人にして欲しくない、そんな思いで立ち上げたのが、「子育てサロンこなめの会」だった。子育てサロンなんて名前からすると、子育てのいろはを教えてくれるか、子育てをテーマに喋りましょうなんて思ってしまうけれど…
「子育ての何かを教えあうんではなく、ただおしゃべりをするのでもなく、何かものをつくるっていうことで、隣の人が誰でも、初対面の人が隣に座っても、こう、手仕事してる間にボソッと今思ってる気持ちとかが声に出て、それを隣の人がまた手仕事しながらそれを拾ってくれて、わたしもそういうときあるよ、みたいな。だから構えないで会話ができるっていうのが凄いなと思って」
テーマを設けて話すこともいいことだけど、ひょっとするとテーマを設けなかったからこそ、構えない関係が出来たのもかもしれない。
「いいお母さんをしなくていいんです。こんなにわたしはいいお母さんなんですよ、こうやって頑張ってるんですよっていうふうな感じで、だから本当のことが言えたのかもしれない。」
そんな場所だからこそ、ときには旦那さんとケンカして、泣きながら来たママもいたのだとか。
「ああ、もうわたしはこれで、自分がやろうと思ってた目的を彼女がかなえてくれたって思いました。これ本当にやって良かったって思えたのは、その瞬間で。彼女は泣いてるんだけど、来てくれて凄いありがたかったです。」

そうやってはじまった「子育てサロンこなめの会」は、今までの趣味の世界から、彼女とがま口との出逢いで大きく動き出す。
「がま口に出逢って、もうガーンと来て、1個1個がま口なんだけど、全て個性が違ってて、それぞれの個性をちゃんと活かしながら、それぞれの好きなものを作ってるんだけど、全部がま口っていう、がま口だったらみんなで出来るって思って、<ほっこり暮らしのがま口屋>立ち上げました。」
メンバー募集で集まったのは、6人のママたち。そこから各地の手作り市(三鷹、仙川、深大寺)に目標を立てて始まる。でもその目標に無理がないのも、堀毛流と言ってもいいかもしれない。
「みんなその日までにそれぞれのがま口を作って、バーンってその日に並べるって言う方法でやっていたんですけど、もちろん子育てが最優先なので、何個作んなきゃダメとか焦る必要は全くなくて、出来るときに出来た分だけ出そうって、その日が1個でもそれでもOK、でも結果凄く並んで、もうそれを作ることが楽しくなって」

でも肝心の自分たちの住む千歳烏山に手作り市がない。だったらつくろうとなったのが、「カラスヤマ手作り市」だ。しかし、もちろん話はそう簡単には進まなかった。
「どんな人かも分らないただの住人が何回言っても貸してもらえないんですよ。」
門前払い。それでも諦めずに何度も企画書を持って窓口に行った。途中で挫けそうだが、それでも何度も足を運んだのは、やはり、子育てという、決してラクじゃない時期をともに過ごした仲間が待っていてくれたかもしれない。
「一緒にやるよって言ってくれる仲間と、子どもと、わたしの中のないものは自分でつくればいいって思ってる、そのこころっていうか、その子に恥ずかしくないように、その子がきっと喜ぶだろうな、こうしたらきっと喜ぶだろうなって、どっちかなって判断するときは、この子が喜んでくれると思うほうを選ぶので、だからたぶん心から自分が笑っていられる方に常に進んで行けるんだと思います。」
彼女の物語はまだまだ尽きそうにない。また機会があれば、物語の続きを聞きに行こうと思う。
(おわり)

堀毛 成美
カラスヤマ手作り市代表、favoriカフェ担当、カメラマン、イベントの企画運営など、その活動は多岐に渡る。
*現在は、千歳烏山から離れ、2021年に南房総市千倉にゲストハウス千倉のおへそをスタート。
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